黄瀬戸
黄瀬戸(きぜと)は、桃山時代を代表する瀬戸窯の茶陶の一つで、温かな黄釉を特徴とします。鉄釉を混ぜた灰釉が高火度で焼成されることで、淡黄から飴色に至る多彩な表情を見せ、茶人に愛されたやきものです。文様には菊花や格子、木の葉押しなどが用いられ、素朴さと装飾性が共存します。油揚手と呼ばれる柔らかな発色や、胴紐、六角盃など多様な姿を持ち、桃山茶陶の中で独自の存在感を放ちます。黄瀬戸は瀬戸本窯の技術と茶の湯文化が結びついた結晶であり、侘びと華やぎを併せ持つ美が魅力です
美濃陶
桃山時代の美濃陶は、茶の湯文化の隆盛とともに大きく花開きました。瀬戸から移り住んだ陶工たちが土岐・多治見周辺に窯を築き、黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部といった新たな茶陶を生み出しました。これらは従来の実用陶器を越え、茶人の美意識に応える「造形としての器」として革新を遂げたものです。美濃の土と釉薬は豊かな変化を見せ、炎の働きを積極的に取り込みながら、侘びと遊びを兼ね備えた独自の景色をつくり出しました。桃山美濃陶は、わずかな不均衡や素朴さを美へと昇華させた日本陶芸史の金字塔であり、後世に続く茶陶の原点といえます。








