「古雅」という言葉がある。
私は、美とは、この一語に尽きるのではないかと感じている。
――雅でなければならない。
どれほど“ひょうげた”ものであっても、そこに雅が宿っていれば、それでよい。
それは、個の品格に他ならない。
孤高であることは美しい。
だが、孤高が摩耗しても、そこに品が残っていれば、それはなお美しい。
では、品とは何か。
それは、苔むす景色である。
瑞々しく、年月を吸い込んだ苔が、微かに匂い立つような――
言葉にすればたちまち消えてしまう、
絵にも描けない美しさ。
それこそが、品の正体であり、古雅の気配である。
